菅と東条


http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2011052500644

自民党谷垣禎一総裁は25日午後、衆院議員会館内で講演し、民主党内にも菅直人首相の退陣を求める動きがあることについて「東条内閣の末期、『東条(英機)さんでは駄目だ』と言って
近衛(文麿)さんが動いたけど、なかなか倒せなかった状況のように思える」と述べ、菅内閣を戦時中の東条内閣に例えた。

 東条元首相は太平洋戦争中、戦況悪化に伴い辞職しており、谷垣氏の発言は、東日本大震災の復旧・復興などを理由に退陣を拒否する菅首相をけん制する狙いもあるとみられる。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110521/dms1105211603005-n1.htm

その後出版した同書で佐藤氏は、1000年に一度という大災害に対処するため、「暫定的に国家翼賛体制を確立する必要がある」とし、「大和魂菅首相を支えよ」と訴えている。その真意はこうだ。

故意か、偶然か分からないが
菅現首相を大東亜戦争を開戦した東条英機になぞらえる記事を見かけた。
自民党総裁の谷垣氏のコメントと
外務省のラスプーチンと知られた佐藤優氏の意見である。


自民党総裁の谷垣氏の意見は、東条首相を左翼よろくし
戦争の犯罪者としてみなしたもので
レッテル張りで、現首相のイメージを貶める幼稚な論説であり
短い配信記事からも彼の薄っぺら国家観と歴史観が透けて見える。
残念ながら人間としての器の大きさを感じるものでなく
民主党のほぼ最悪といえる危機管理の欠如と
無責任な政権運営にも関わらず
自民党に輿望が集まらないのは、
テレビメディアの民主党責任スルー体制もさることながら
総裁自身の力量不足によるところが大きいと思う。



一方、佐藤優氏の意見は、
首相たるもの歴史に悪名に残すともリーダーシップを発揮して
困難に臨めというものである。


A級戦犯で死刑となり、
裁判の経過よりも結果のみが偏重して伝えられた今日では
東条英機は「悪」として批判されることが多い。
官僚としては優秀でも、政治家としては器量に乏しく
開戦を回避できなかったことについての評価は論を俟たないが
天皇と国家に対する誠心だけは紛うことなく本物であった。
佐藤氏の意見をやや誇大に解釈するならば
現首相は、言葉ではなく行動に誠を持てということだろう。


現首相が以前口にしていた未来の評価を待つということは
今生のすべきことをなし終えた人間にあたえられるものであり
人気取りと責任回避のみの政策に終始する者の評価は
未来を待たずともたかが知れている。
佐藤氏は、大和魂を持てと激をとばしているが
誠をもたない人間に愛国心など起きるはずもない。
またそうした人物にとって変わる輿望も知見も示せない総裁は
歴史に準えれば、東条内閣の後を襲い
8か月で何もできずに終わった小磯国昭にすら遠く及ばない。


明けない夜はないが、この国に旭光が訪れるまで、
いましばらくの時間が必要である。