伊東正義 総理のイスを蹴飛ばした男――自民党政治の「終わり」の始まり


伊東正義 総理のイスを蹴飛ばした男――自民党政治の「終わり」の始まり


リクルート疑獄、混迷を続ける自民党
竹下から後継者に指名されたが
党が本気で金権体質を変える気がないからとの理由で
総裁の椅子固辞した伊東正義
ならぬものはならぬと頑固一徹会津者の
小気味いい一代記ではあるが
読後に物足りなさが残った。


バーティを開かない、金に汚くない井戸塀政治家、
清貧な政治家が自民党で三役まで務めたことは
ある意味驚きであり、新鮮ではあるのだが
本書はその伊東氏の清々しさに焦点を当てて
新旧の政治家に対するあてこすりのような面が
見え隠れしているため、
素直に文面を受け取りにくかった。


盟友大平正芳を支えるべく活動し
日中の国交回復に尽力して
中国側から高い評価を得たとのことだが
具体的にどのような交渉を行い、
話をまとめたのか、詳細な部分がすっぽり抜け落ちている。


本書で、伊東氏を評するのではあれば
ただ清廉潔白であったとはいえるが
政治家として評価することが
まったくできない。
総理の椅子を蹴飛ばした、というのは
間違いではなとしても、それはメインではないだろう。
政治家として何を目的に
どんな活動をしたのがもっとも重要である。
金に綺麗で義は通しましたが、
重要政策は何もしてませんでは
本当に自民党への当てこすりにしかならない。


著者は、伊東氏と緊密な仲だったというが
至近距離で彼は何を見ていたのか。
食い足りない一冊だった。