ありがとう

約2年前、何気なくつけていた深夜番組
画面に目をやることなく聞き流していた時
オムニバスのCDのCMに聞き覚えのある曲が流れた。


メロディが気になって調べてみると
Kokiaの「ありがとう」だった
とあるフラッシュで使われた曲はこの作品だったのかと思い
改めて聴いてみた。
途端、インスピレーションが沸いた。


そして、一気に書き上げたのが
拙作「涙がこぼれないように」だった。


当時、労多くして報われない人たちの
苦しみや悲しさ、やるせなさなどが時の彼方に押しやられ、
時代とともに忘れさられるのが我慢ならなかった。
そうした事実が物語の下敷きとしてあったにも関わらず
それらを掬い上げる術がなく、煩悶としていたところ
この曲が、天啓をもたらしたーというより、
見落としていた事実に気がつかせてくれた。


おそらく彼らは褒められたかったわけでもない。
上司から評価されたかったわけでなもない。
名誉でも地位でも報酬でもなく、
彼らが最も欲していたものー
それは、「ありがとう」という言葉だった。


「ありがとう」という言の葉の心外の重さに戸惑いつつも
紡ぎ上げた物語は、僅かではあるが
主人公である彼らに届けることができた。



掲載を許可したくれた宇高氏、ありがとう
執筆に協力してくれた妻よ、ありがとう
本の掲載に携わった方及び拙作を読んでくれた方、ありがとう