すべてのアスリートに祝福あれ

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産経新聞特別記者の別府育郎氏が、
ここ数年産経紙上で綴った記事ー
円谷幸吉君原健二
神永昭夫と猪熊功、
ベラ・チャスラフスカと遠藤幸雄
についての3つの物語を纏め、
ベースボーマガジン社から発売された。

また、上梓された記事と前後して綴られていたボクシングのコラムも
やはり、ベースボールマガジン社から刊行されており
長年、同記者の記事に惚れんこんでいた自分からすれば
盆と正月が一緒に来たような気分になっている。

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別府氏は、これまでに珠玉ともいえるコラムを多くを発表していたものの
発表の機会が準全国のマイナー紙に限定されていたことから
彼の文章を知る人は多くなかったであろうが
今回の発売を機に、彼の文章に触れる人が一人でも
多く生まれることをねがってやまない。


東京五輪の開催に反対する声が大きいなか
開幕の翌日の産経の一面ま紙面には
当然のごとく、別府氏の文章が掲載されていた

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1年前の同じ夜、白血病からの復帰を目指す競泳の池江璃花子は暗闇の国立競技場で聖火のランタンを手に一人立ち、こう語った。

「逆境からはい上がっていく時にはどうしても希望の力が必要です。希望が遠くに輝いているからこそ、どんなにつらくても前を向いて頑張れる。1年後の今日、この場所で希望の炎が輝いてほしい」

その後の過酷なリハビリと驚異的な回復力で代表権を勝ち取った池江には五輪開催に反対する人らから出場辞退を求める声が突きつけられたこともあった。

東京五輪をトンネルの闇の先の光としたい。多くの関係者がそう語ってきた。残念ながら新型コロナ禍の闇は晴れていない。無観客のトンネルの中で五輪は開会を余儀なくされた。



だが、闇とは何か。全盲のパラリンピアン、競泳のエース、木村敬一はこう話してくれたことがある。

「僕は闇という言葉に、そもそも概念を持ち合わせていない。単に光や希望のない世界ともとれるし、ただ上から覆いかぶさっているだけで、外せば晴れるもの、いろいろな冒険ができてチャレンジができる世界。そうともとれる」

「闇」に対して、これほどポジティブな言葉は聞いたことがなかった。

満員のスタンドに迎えられることなく競技場を行進する選手たちに、木村の言葉を贈りたい。闇という冒険の場を、自らの競技力で切り開いてほしい。新たな伝説を作ってわれわれの記憶に刻んでほしい。われわれは遠くからでも、精いっぱいの拍手を送る。

スポーツが命より大事とは言えない。
ただ、スポーツに命と同等のものを賭けて
生きてきた競技者に経緯を払うべきだろう。
彼らが綴った物語がなかりせば
この日本はどれほつまらなく、味気ないものだっただろうか。
勝者と敗者ー努力が報われるとは限らない結末に
青春の全てを注ぎこむー
全てのアスリートに祝福あれかし。