赤い鳥と島唄とアルゼンチン

島唄よ風に乗り 鳥とともに海を渡れ
島唄よ風に乗り 届けておくれ
私の愛を

THE BOOMの島唄は、
ボーカルの宮沢が沖縄の戦跡を訪れ
その悲惨さに知ったことにより生まれた。
祈りにも似た感情を込めて作り上げられた曲は
当初、沖縄限定で販売された。


ウチナンチューでない者が沖縄の音を奏でることに
宮沢は躊躇いを感じたそうだが
喜納昌吉の「魂までコピーすれば許される」の言葉に
後押しされて発表した。


今から8年前
2002年日韓大会
アルゼンチン代表チームの応援歌はTHE BOOM島唄だった。
アルゼンチンの日系人の間で聞かれていた曲が
アルゼンチン全土に流行し
サッカーの応援歌となったとのことだった。


世界はおろか日本全国の発売すら予期していなかった
THE BOOMの宮沢にしてみれば
それこそ夢にすら考えていなかっただろう。
残念ながらその年のアルゼンチン代表は
グループステージで敗退してしまったが……。


ワールドカップに日本が初出場したフランス大会では
日本のサポーターらは赤い鳥の「翼を下さい」を歌い
ジョホールバルでの戦いを勝利へと導いた。
歌われたのか経緯は知らないが今思えば
世界への扉を開けようとしていた日本サッカー界にとって
この曲はとてもふさわしかったと思う。


約三十年前、この国では
ワールドカップを除き
海外のサッカーゲームをみようと思えば
土曜の6時に東京12チャンネルにチャンネルをあわせて
三菱ダイヤモンドサッカーをみるよりほかはなかった。
番組の時間は1時間足らずで
前後半を二週間に分けて観戦しなければならない寒い状況だった。


そんな時代にボールを蹴っていた者からすれば
日本がワールドカップに出場し
グループステージでデンマークを破り
決勝トーナメント進出の快進撃は
夢をみている感すらある。


海と空の彼方の南アフリカ
選手やサポータが口にするのは何の歌なのだろうか。
翼を手に入れることができなかった者の願いと祈りを込めて
オーレ。