海の都の物語

海の都の物語〈3〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)
海の都の物語〈2〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)
海の都の物語〈1〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)
海の都の物語〈6〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)
海の都の物語〈5〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)
海の都の物語〈4〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)




ローマ帝国なきあと、
混乱が支配したヨーロッパ。
蛮人の襲撃から身を守るため
干潟に難を逃れた人々が
生きるために知恵を絞り、街をつくり上げ
やがて、ヨーロッパ有数の海洋都市国家として
千年の繁栄を築く。


地中海の主要な場所に拠点を築き
海洋貿易で栄華を極めたベネチア
そのベネチア商船の海路を
作者の塩野七生は「海の高速道路」と呼んだ。


ベネチアの繁栄は、
胡椒に象徴されるオリエントとの貿易によって
もたらされたものであり、その重要性を
認識していた彼らは惜しげなく
富と力、人の命までも費やし、それらを守り抜く、


ギリシア正教カソリックの対立、イスラムへの蔑視
海賊と大差ないジェノバとの競争、
都市国家から大陸国家への変遷
大西洋航路やインド洋航路の確立
時代の波にのまれ、存立基盤が何度となく脅かされても
彼らは、彼らの流儀によって必死に生き抜いた。


効率的な組織が、最大の利益をもたらすことを
信条としてた彼らは
時に不合理や非効率さをともなっても
それらを守り抜き、
周囲の都市や国家が没落するなか
長きにわたり光を放ち続けた。


資源もなく、土地もない貿易で
国を営もうという国は
この国の生き様に多くのことを
学ばなければならないだろう。



ベネチア人とはいったい何者なのかー
またそれを可能としたベネチアという国家について
作者が独自の視点から俯瞰し
国家を人になぞらええたようなユニークな語りが
知的な欲求をゆるやかに満たす。



それはまさしく物語と呼ぶに値する。