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ジェフを愛した男・巻誠一郎。熱い想いを袖にする経営陣の愚。 - Jリーグ - Number Web - ナンバー

 7月31日、ジェフ千葉が大分に5−0で勝利した後、ロシアリーグのアムカル・ペルミに移籍する巻誠一郎のセレモニーが行なわれた。

 スタジアムには、観戦していたサポーター13000人のほとんどが試合後もそのまま残っていた。巻は、サポーターへの感謝の気持ちとチームへの想いを素直に語り、その言葉に皆涙し、最後まで巻コールが鳴り止まなかった。巻がサポーターに愛され、支持されていたということを改めて感じさせてくれた素晴らしいセレモニーだった。

 その一方で、巻の移籍に際しトップやフロントの心ない対応にガッカリしたサポーターや選手も非常に多かった。ジェフの「悪しき慣習」は変わっていない、と。

 過去、ジェフはチームの象徴となった功労者に対して、あたかも冷水を浴びせるかのようにして追い払ってきた歴史がある。例えば、中西永輔がそうだった。阿部勇樹にしても当時のトップから慰留の言葉はおろか、感謝の言葉もなく、むしろ多額の移籍金が入るので積極的に放出する姿勢を見せさえしていた。トップの対応にガッカリした阿部は「心のないチームにはいられない」と、レッズに移籍していったのだ。

現在、NHKのBSで放映しているアニメ「Giant Killing」の
主人公達海猛が所属するETUは、原作の綱村将也によれば
自身がファンであるジェフ市原がモデルであり
準主人公の椿は巻をイメージしているという。
漫画であれ、現実であれ迷走を続ける球団についていく
サポーターほど尊い存在はないと個人的にはつくづく思う。


ワールドカップ終了後、発表された巻のロシアリーグへの移籍は
唐突の印象がぬぐえなかった。
ジェフ市原から主力が大量に移籍しても
チームがJ2に降格しても、チームとサポーターが好きだという理由で
チームに残留を表明していた巻が何故、と
思った人間はtacaQだけではあるまい。
移籍発表直後から、ジェフから解雇同然で移籍話が
まとめられた経緯が漏れ伝わってくるのを聞き
中西や阿部同様に、選手を大事にしないフロントの姿勢に
嗚呼またかとの長嘆息がもれた。


日本リーグ時代からの名門読売・現東京ヴェルディが、
チーム存続の危機に立たされている。
リーグの球団経営は部外の者が簡単に口にするほど
容易ではないことは想像できる。
高給で使えない選手を放出するというフロントの方針が
理解できないものではない。
若手を育てて、資金力のあるチームに選手を売って
チームを強化する金を確保するという方針を掲げてるクラブもある。
だから、一概にジェフの球団フロントを非難できない。
ただ、サポーターですらこの移籍について
球団からの前向きなメッセージをなんら読み取ることはできない。


Jリーグは、発足から約20年がたち、社会的な立場を
築きあげたといえよう。
ただし横浜フリューゲルスの消滅、
清水エスパルス鳥栖フューチャーズ大分トリニティ
現在でも読売ヴェルディの経営危機など
経営面では、平坦とはいえず、決して安楽な道のりではなかった。
それでも日本サッカーのレベルを向上させ、
選手にもプロスポーツ選手としての意識が備わり
それなりの器となり人間が集う場所を作りあげた。
今後、Jリーグがさらに発展するには
選手だけでなく、フロントが"大人"、プロとして当たり前のことを
できるかどうかだと思う。