エスニッククレンジング


当時名古屋グランパスエイトに所属していたストイコビッチの影響で
最近までNATOユーゴ空爆については否定的な意見を持っていた。
全ての戦争について反対を叫ぶつもりはないが、
湾岸戦争後のクリントンアメリカ政府の方針に不信感を抱いていたのと
虐殺はメディアによる捏造、誤報というニュースも流れており
何を信じて良いのか、全く分からなかったからだ。



空爆への道

泥沼化したボスニアヘルツェゴビナに国連防護軍を展開するきっかけになったのもサラエボのバセミスキーナ通りで起きたパン屋に列ぶ人々を襲った爆弾事件であった。ボスニアセルビア人共和国への空爆のきっかけをつくったのもサラエボの青空市場迫撃砲事件であった。パン屋の行列爆発事件は後になってイスラム教徒の自作自演とわかり、青空市場迫撃砲事件の犯人も結局分からずじまいだった。いずれにせよ一般市民が事件に巻き込まれるとCNN、BBCなどのマスメディアが一斉に報道し、それによって国連を引きずり込むという図式が確立された。

だが、最近NATO(=アメリカ軍)によるユーゴ空爆は必要であり、
むしろ遅すぎたのではないかと考え方を修正しつつあった。
そうしたところに
NHK-BS「ボスニア内戦 10年目の真実」はタイムリーすぎる番組だった。

「ボスニア内戦 10年目の真実」(NHK)


無抵抗の丸腰の市民が、ただモスレムだからという理由で
セルビア軍兵士(或いは民兵)に次々と殺戮されていく映像は
正直正視に耐え難かった。
平和を監視すべき国連軍(=オランダ軍)は、
目の前の圧倒的な暴力に対してあまりにも小さく
撃たれるまで撃っていけないというROE(交戦規定)は、
多くの市民が命を落とす現実の前にして弾丸1発分にも値しなかった。
このおそぞましく戦慄すべき、そして唾棄すべき現実が
たった10年前ヨーロッパで行われていたことを知らなかったとは
己の無知ぶりを恥じるのみである。



鉄と硝煙による暴力は世界中の至るところで起きている。
それらを排除するに必要なのは、より強力な鉄と硝煙である。
矛盾しているが安定した平和を生むのは力より他はない。
この冷酷な世界を前に、平和の美名のもとに左や自称中道のカルトが跋扈して
机上の空論をもてあそび「無防備都市宣言」などと無意味な運動や採択を推進している。
そうした意見を支持をしている有識者達と議論を交わす気などまったくないが
平和の作り方を知らない人間に平和を守ることはできないとだけ云っておく。
太平洋戦争終結後60年にわたり日本の国土は戦争に巻き込まれることはなかった。
だが、この先もそうであると誰が断言できるだろうか。