3月のライオン17

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約2年ぶりに出た単行本

17巻のあらすじは
主人公・桐山零とそのライバル二階堂晴信が獅子王戦で対決
桐山のジャックラッセルを思わせる指しっぷりに
二階堂は重厚な駒運びで対抗する
激闘の末に軍配は桐山に上がり、
二階堂は体調を崩し、入院を余儀なくされるー

物語のメインは、当然のことながら
火花を散らすような盤面の戦いなのだが
一番心にしみたのは、
対戦後に見舞ったニ階堂の兄弟子・島田開と
師匠・古泉の回想の場面だった。

奨励会に入会した頃と思われる時期、
体が弱いことを心配して、心労の多い棋士となることを
気遣う島田開に対して
「あの子はとっくに選んどるのに?
 あの子の心は火の玉だ、戦いたいと訴えている
 なのに、座して死を待て、と
 その方がよっぽど酷だよ、開」
と二階堂の人生の選択を肯定する古泉の言葉に
涙腺が崩壊しかかった。

思うに
道を進み、何者かになろうとする者は
おうおうにして何かを手放す。
人の能力と時間には限りがあり
すべてのことを満たすことが難しい以上
それは已むえない選択なのかもしれない。
しかし、何かを手放したとしても
目的の地にたどり着ける保証はない

はたから見れば、賢い選択とはいいがたいが
賢しく生きることだけが
人生の目的なのかー?
大事のなのは納得のいく人生か、否か、ではないか?

10年以上続く連載だが、物語の佳境も近いような気がする。
それにしても、交差する棋士たちの人生のなんと重いことよ。