ガマの油

俳優の役所広司が監督、主演、原案を務めた作品。
場面の構成が好みの味とやや違うが
よくまとまりいい作品だった。


田園調布の豪邸に住む矢沢拓郎(役所)は
「どんなもんじゃい」が口癖のトレーダー
妻(小林聡美)と息子拓也(瑛太)で暮らしてる。


ある日拓也は恋人光(二階堂ふみ)とのデートを切り上げ
少年院から出所する親友の秋葉サブロー(澤屋敷純一)を迎えに行くが
途中で交通事故に遭い昏睡状態になる。
拓也が不在のままでサブローは拓郎の家で生活を始める。
そして光は、拓也が昏睡状態であることを知らず
携帯に電話をかけ、電話口に出た拓郎を拓也だと思いこむ。
ぎごちない人間関係と嘘を抱えた拓郎を軸に展開する物語に
笑いと涙が炸裂する。


息子が事故に遭ったことによって
拝金主義者の父親が、人生に一番大事なことに気がつき、
過去に傷を負った少年とともに成長するー
ありきたりといえばありきたりの話ではあるが
非常に新鮮で爽やかな印象が残った。
それは破天荒である主人公拓郎のキャラ作りの成功に負うところが大きい。


数秒で億単位の金をやりとりするトレーダーにして
銀玉鉄砲好きのコドモである拓郎の行動に
観客が知らず知らず引き込まれてしまうからだ。
また拓郎にだまされたままで一喜一憂する
爆超のテンション女子高校生の光の存在も大きい。
拓郎の嘘にいつ気付くのだろうという興味を
観客に持たせつつ
飽きさせない演出で
二時間を超えても見る側を
全く疲れさせない。


物語のキモは、拓郎による光への種明かしなのだが
それはここで語るより実際に見てもらった方がいいだろう。
携帯電話のやりとりや光の家族の優しさにホロッとくる人は
少なくないと思う。
不満と言えば、ガマの油の本拠地であるtacaQの田舎筑波山
ほとんどでてこない点ぐらいだ。


大切な人と観に行って良かったと思える作品である。