熊本のために


「熊本のために」結集したJリーグの力 (写真=共同) :日本経済新聞

仙台がJリーグパートナーのルートインホテルズと連携して熊本の選手に合宿地を提供すると申し出たり、四国リーグのFC今治日本サッカー協会も同様の声をあげたりした。


 5月3日に熊本で試合をする予定だった愛媛はホームとアウェーを入れ替え、先に松山で試合を開催してはどうかと提案してくれた。明治安田生命は自らの熊本のオフィスが被災しているにもかかわらず、根岸秋男社長がクラブの事務所に飛んできてくれた。


 こうした動きを見ていると、Jクラブが38都道府県にあることがリアルな意味を持ち始めたのではないかと感じる。日本では災害は度重なる。そのとき、Jリーグは連携し、協力し、助け合う態勢ができている。代替の環境を提供し合い、リスクを分散できる。


 今回の熊本がそうであるように、スタジアムは支援物資の集積基地になる。もし地域に屋根付きで、多くのトイレがあり、物資の備蓄されたスタジアムがあれば、被災者が避難所として使える。スタジアムは災害拠点になる。


■地域密着の思想、選手の体に染み込む


 Jリーグが地域密着の思想を掲げてきたことも意味を成している。熊本の巻誠一郎選手らが当たり前のように、傷ついた町に入っていき、子どもたちと触れ合い、喜ばせたのは、地域密着の思想が選手たちの体に染み込んでいるからだろう。ふだんから、そうした活動を重ねているから、自然な形で地域のために動けた。


 現地入りしたJリーグのスタッフには、熊本の様子をできるだけ動画に収めてほしいと頼んだ。カメラはこんなシーンをとらえた。


 避難所の子どもたちとボールを蹴り合った後、熊本の選手が発した「頑張るぞー」の掛け声に、子どもたちが元気に「おー」と応じる。

4月の熊本地震に伴い、Jリーグの一部の試合が中止となり
熊本を本拠としているロアッソ熊本
試合はおろかチーム活動の停止を余儀なくされた。


Jリーグは、ロアッソ熊本リーグ戦再開に際して
原副理事長を現地に派遣し、判断を委ねることにした。
日経新聞の記事はロアッソのリーグ戦復帰の判断基準は
(1)地元の方々の生活を最優先する。
(2)選手とその家族をおもんばかる。
(3)クラブの職員とその家族をおもんばかる。
(4)地域のサッカー界のことを考える。
(5)最後にJリーグのことを考える。
であることを伝えている。


こうした報道に触れるとき、日本のサッカーは
強くなっただけでなく、
すごく大人になったと感じる。
十数年前大阪の小学校で悲惨な事件が発生した時、
Jリーグは直後の試合で弔意を示したことに
触れた記事を読んだ記憶がある。


勇気づけるとか、日本を元気にするとか
引っ張り上げるようとする掛け声よりも
悲しみを共有し、苦しみを分かち合うという姿勢は
眩く映る。


J2は経営規模が小さく、
苦しい台所事情を抱える地方のチームが多い。
ロアッソ熊本もそうしたチームの一つであり
今回の震災は大きな痛手であり
場合によってはチームの経営基盤に
深刻な打撃を与えるかもしれない。
シーズン序盤に好成績を収めていただけに
今回の中断は非常に残念であるが
彼らが再び立ち上がることを
信じてやまない