「私はグルメハール・コール」
「父(大尉)は1999年の(パキスタンとの)戦争で殺された」
「私は当時2歳で父の記憶はほとんどない」
カメラの前、インド人の女の子が36枚のメッセージカードを次々に掲げる。無表情に努めて、一度も口を開かない。聞こえるのはカサコソという紙の音と、静かなBGMのみ。その演出も同情と共感を呼んだ。
メッセージカードは続く。「父を殺したのはパキスタン人だからと、パキスタンやパキスタン人を憎んでいたことをよく覚えている」。イスラム教徒(ムスリム)は皆がパキスタン人だと思い込み、インドに住むムスリムを憎んだ。6歳の時には、ムスリム女性を刺し殺そうとまでした……。
パキスタンと国境を接するインド北西部パンジャブ州に住む、女子高生のグルメハールさん(19)。彼女は幼少期に抱いた憎悪を告白したカードを黙々と掲げる。ところが、13枚目になって、彼女の感情が変化するきっかけとなった母の教えを紹介する。
「父を殺したのはパキスタンではない。戦争だ」。そして、カードは続く。
「いまは私も戦士です」
「インドとパキスタンの平和のために戦います」
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いまこの地上に
多く国があり、多くの人がいがみ合い
憎しみ、殺し合う現実は
悲しむべきことではあるのだが
そうした風景が日常に溢れ
当たり前のように重ねられる。
ネットやメディアで報じられる大小の悲劇に
涙の一粒も零さなくなった自分は
涙が枯れたというより、
感覚が麻痺しているといった方が正確なのだろう
だが、それは間違いであることに
一人の少女に気付かされる。
憎しみを駆り立て、他人を侮蔑する言葉を忌むー
それ以外に我になす術はないが
それだけでも世界はずっとよくなる気がする。