永遠のゼロ

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)


映画化された百田尚樹の小説。


司法試験に失敗しくすぶっている佐伯健太郎
姉・慶子の手伝いとして本当の祖父「宮部久蔵」について
その人物像を調べ始める。


太平洋戦争において海軍に所属し、ゼロ戦パイロットとして
天才的な技量で戦い抜き、そして終戦間際特攻隊で散華。
死を厭わず、勇敢に戦うことが是とされた時代において
家族のために死ぬことを恐れる臆病者ー


健太郎は、祖父の戦友達からの人物評を聞き集め
戦争と祖父を徐々に理解していく。
その真の姿をつかんだ時、健太郎と慶子は
祖父から受け継いだもの尊さを知るー。



特攻隊員をテロリスト、洗脳された戦争の犠牲者、
という現代日本風の曲解に対して
明確な解答がこの小説に用意されており
書き手の偏重を感じることがなく、
素直に物語の世界に
没入することができた。


祖父と孫をつなぐ不思議な縁を終盤に明らかにし
小説としてのプロットも巧みであり
やや的外れな評論になるが、
浅田次郎の「壬生義士伝」に近い話の構成だったと思う。
あの戦争を戦った人たちに対して
深い感謝の念がこみあげ、
さめざめとした静かな感動が胸に広がり
途中嗚咽をもらそうになった。


戦争知らない世代が、描く戦争と軍人。
風立ちぬ」の映画監督が大嫌いと批判した作品だが
已むに已まれぬ大和魂を肯定しないまでも
否定する必要はことさらないのではないか。


南海で、大陸で、戦った多くの人たちを悼む。