なくしたもの


何度も紹介している産経新聞、別府育郎氏の最新の記事。
失敗と屈辱の記憶を糧に
高いところへ駆け上がったアスリートらへの
賛歌ともいうべき内容は
本人も涙ながらに書いたのではないかと思うほど
心揺さぶられた。


このコラムには、以下の文言を添えるよりほかはなし
”勝者に哀を敗者に歓びを”



http://sankei.jp.msn.com/sochi2014/news/140309/soc14030903150000-n1.htm

ショパンの「ノクターン」で舞ったSPの浅田は、冒頭の3Aで転倒した。その後のジャンプでも信じがたい失敗を繰り返してSP16位に沈んだ。顔から表情が消えたようにみえた。


翌日のフリーはラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」。多くの人が、祈るような気持ちで浅田の演技を見守ったろう。


原田は4年、葛西は16年の歳月をかけて失ったものを取り戻したが、浅田は1日で、それを成し遂げた。3Aを舞い降りただけでなく、鬼気迫る演劇性で観戦者を遥(はる)かなる高みへといざなった。そう見えた。泣けて泣けて仕方がなかった。


泣き笑いの終幕に至る舞台装置は、前日の大失敗が作った。競技がSPとフリーの合計点で争われる以上、6位の浅田を勝者とは呼べない。だが「良き敗者」である以上に、心揺さぶるスケーターとして、どの勝者よりも強く記憶に残るだろう。