硫黄島そして太平洋

本職は、深く親愛する全軍将兵の心事をおもい、断腸痛心この事にほかならず
陸軍18軍司令官安達二十三中将


太平洋の孤島、飢えと渇きに苦しめられながらも何故日本軍は戦ったのか。
昨日のNHK特集では、硫黄島を戦った日米双方の戦士のインタビューを軸に
番組が構成されていた。
それぞれが体験した悲惨な戦闘に身のつまされる思いがしたが
最高指揮官である栗林中将が斃れた後も、
日本軍がゲリラ活動を続けた理由を
生きて虜囚の辱めを受けずとした降伏を許さない教育や
投降を許さない狂った将校がいたからだというようなことを述べ
日本軍の精強さを正当に評価しようとしない姿勢はいただけない。


インタビューに応じた戦士達の言葉に嘘偽りはなくとも、
彼らの体験しした悲惨な戦闘だけが、戦争ではない。
今更ながらに、NHKは戦争を指導した大本営を矮小化し、
血も涙もない鬼と呼びたいのだろうか。
投降すると殺される恐怖から戦ったという兵士もいたかも知れないが
それだけが理由で過酷な戦いを行いうることはできないと私は思う。


硫黄島で戦った彼らは大半がその地を踏んだ時、死地であることを自覚していた。
それでも彼らが意欲的に戦争に臨んだのは、憎きアメリカ兵を倒すために、
東京を日本を守るために、との一念を有していたからであり
何よりも栗林中将の指揮統率が際だっていたからこそ、
日本軍を上回る損害を米軍に与え、最後まで戦うことができたのだ。


パプアニューギニアで、陸軍第18軍を指揮した安達二十三中将は、
食糧不足で部隊の統率がとれなくなる前に、
口減らしともいえる過酷な戦いを半病人が大半である麾下部隊へ下令した。
結果として部下の大半を殺す結果となり、
戦後身に覚えのない捕虜虐待の罪で終身刑が言い渡された後、
中将は看守の目を盗んで自決を遂げて、部下に詫びるのだが
生き残った数少ない彼の部下は彼の死を哭いたという。


また、ガダルカナル島から陸軍の1万3千人を撤退を成功させるために
ニューギニアのブナで戦う小田少将は
玉砕を覚悟して自らの部隊が囮となり米軍を釘付けにして
文字通り最後の最後まで戦い抜き、ガダルカナル島撤退作戦成功の一翼を担った。


何故彼らがそこまで戦いえたのか、
死の恐怖よりも、もっと大きな愛があったからではないだろうか。


以上、戦争知らずのアマチュア戦史家の独り言である。





小説太平洋戦争(4) (山岡荘八歴史文庫)

小説太平洋戦争(4) (山岡荘八歴史文庫)