フラガール

フラガールスタンダード・エディション [DVD]

国のエネルギーの主役が石炭から石油へと
かわりりつあった昭和40年代、
石炭産業が唯一の市民の生きる糧だった炭坑の街いわき市を舞台に
リゾート施設建設の構想発表からオープンまでの騒動を
笑いあり涙ありの体育会系のドラマでまとめた物語



東北に何でハワイなんだ?というツッコミを入れたいところだが
この映画を見れば、そんな戯れ言は口にできなくなる。
時代の波に翻弄されながらも
生き残ろうと知恵をしぼり必死で奔走する市民の姿を
誰が嘲笑の対象とできるだろうか。



この映画の最大のキモはなんといっても
松行泰子扮するフラダンス講師平山がスタジオがわりの廃校の教室で
踊るシーンである。
それまでただのやる気のない口だけの酔っぱらいでしかなかった彼女が
一気に物語の流れを自身の中へと引き込み
また同時に素人娘を数ヶ月で一人前のダンサーに仕立てることが
如何に困難であるかと観客に理解させるのに成功していた。
それまでのコメディ調の雰囲気を一気にシリアスにもっていくテンポの
切り替えは見事だった。



その直後に平山が飲んで「できるわけない、ダンスを舐めるな」と
管をまくシーンがあり、観客の多くはその酔った態度に
不快感を感じながらも云ってることは正論だと頷く筈だ。
「絶対に無理だ」と。
不可能をひっくり返すのが映画でも人生の面白いところではあるが
肝心のダンス講師がやる気がねぇんじゃと・・・
観客側も思わず絶望的な気分にさせらてしまう




福島弁を巧み操る蒼井優扮する紀美子に食われて
多少地味な役回りだった松雪だったが
飲んだくれのダンス講師から情熱溢れる教育者へと
変貌を遂げる役をあますところなく演じたのは素晴らしいの一言。
怒り以外の感情をストレートに出すことをできない不器用さを
クールさで隠そうとする都会者が、
徐々に心を開き福島の方言を使い教え子達と心を通いあわせていく姿は
教育に絶対必要なものは、技術でも経験ではなく
情熱であることを口にせずとも語っており、
つまること街の存亡を賭けたこの計画が成功したのは
企画の卓抜さもさることながら彼女らを含めた関係者達の
ひたむきさだったのだろうと容易に推測させる
わかりやすい作りの映画だったと思う。



お笑いを取り入れつつも基本は日本人好みのお涙頂戴とスポ根である。
ウォーターボーイズスウィングガールズシムソンズ
似たような映画の作り方が似ていることに賛否両論があるだろうが
とりあえず松雪と蒼井のダンスシーンは登場人物の心境を変化させるには
十分過ぎる説得力をもち、物語の奥行きを感じさせていた。
豊川悦治もいい味を出し、松雪と微妙な関係を上手く表現し絡んでおり
知性の足りない作家役よりよっぽと安心してみることができた。





シムソンズ [DVD]

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