ダークナイトライジング


人気アメリカンコミックを映画化した作品ではあるが、
漫画の実写化という枠を越えた物語であり
犯罪者を倒すから正義、という単純な図式で
割り切れない複雑な社会の構図を丹念に描き
矛盾と不合理に満ちた世界を変える力とは何かを
訴えるメッセージ性の強い映画に仕上がっている。

個人的には前作の「ダークナイト」に劣らない傑作と思う。


心を寄せるレイチェルを失い、最凶の敵ジョーカーを倒した
バットマンことブルース・ウェインクリスチャン・ベール)は、
自分の邸宅で無目的な日々を過ごしていた。
そんなある日の夜、メイドに扮した女泥棒セリーナ・カイル
アン・ハサウェイ)に指紋を盗まれる。


それは、ブルースの所有するウェイン産業が開発した核融合炉を
めぐる巨大な陰謀の始まりだった。
指紋盗難のあと、証券会社の襲撃、サーバーに対する侵入、
様々が攻撃が開始され、それらを撃退することにバットマンは成功するが
周到に準備された攻撃計画は、深く進行し
ブルースはウエイン産業を失い、窮地に追い込まれる。
そして、ゴッサムシティの浄化を目論み、
多様な襲撃を指揮するベイン(トム・ハーディ)との対決では
圧倒的に打ちのめされ、ゴッサム・シティが消滅するのを
指を加えて見ていろと脱出不可能の監獄「奈落」に突き落とされる。


街の治安を司る警察官は罠により地下に閉じ込められ
助けに来た軍隊は為す術も無く倒され
ベイン率いる集団は街の有力者を裁判にかけては消していく。
秩序を失った街に、刻一刻と消滅の時が近づいていた。
房総した核融合炉が爆発するまであと数日……。
ブルースは監獄を脱出し、核融合炉の爆発を止められるのかー


物語の中に散りばめられた多くの仕掛けが終盤一気に動きだし、
観る者をあたかも濁流のように飲み込んでいく。
最期の三十分は、息も付かせぬ圧倒的な迫力の映像が
展開され、まさかのどんでん返しの続く。
スペクタクルなエンターティメント性も持ちあわせながらも
正義とは何か、犯罪とは、法律とは何かと観客に多くを問いかけ、
人間としての生き方とは、といった深淵なテーマを突きつける。


本当にこの映画は凄い、の一言に尽きる。