ミシン


ミシン



嶽本野ばらの初の小説集。
関西のとある小さな雑貨屋で、そこを訪れた少女と店主の
恋の一部始終を描いた「世界の終わり終わりという名の雑貨店」と
人気パンクバンドの女性ボーカルと彼女に恋した普通の女学生との
奇妙な友情を著した「ミンシ」の二編から成る。


どちらの小説も、メゾンの名前がふんだんに出てくるので
その方面の知識がないととっつきにくいが
読み進むにつれて、登場するキャラクターの真剣さや一途さに
思わず引き込まれてまった。
特に「世界のー」は悲しいまでに美しい純愛を貫く物語であり
人物の心のひだが痛く、そして心地よく響いた。
人を愛するのことはエゴであるが、そのエゴ故に人は美しくもなれるし
醜くもなれるのではないか、と爽やかな読後感が残る小説だった。