エミリー

 
エミリー

I am god's child
この腐敗した世界に堕とされた
How do I live on such a field?
こんなもののために生まれたんじゃない


突風に埋もれる足取り
倒れそうになるのを
この鎖が 許さない


心を開け渡したままで
貴方の感覚だけが散らばって
私はまだ上手に 片づけられずに


「理由」をもっと喋り続けて
私が眠れるまで

効かない薬ばかり転がってるけど
ここに声もないのに
一体何を信じれば?
  

「月光」鬼束ちひろ


違う世界観を持つ男女の心の触れ合いを描いた3つの小説
レディメイド」「コルセット」「エミリー」からなる短編小説集
どの作品にも作者嶽本野ばらの独特の美意識と世界観が投影されている。
登場する主人公達は細いガラスを積み上げたような繊細で美しい感性を持っているが
美しいが故にはかなく、そしてもろい。


そんな美しい主人公たちが、自分とは違う世界に住む住人たちと接触するのだが
当然のごとく周囲に大きな軋轢や反発を生む。
そうした逆風の中でも、彼らは彼らであろうとする。
周囲から白い目で見られても、彼らは何も恥じないし、何も畏れてはいない。
唯一彼らが畏れるとすれば、自らの"流儀"を捨てることだろうか。
それはあたかも許されない異端の教えに忠誠を誓う殉教者のようですらある。


間違っているのは彼らなのか、それとも彼らを理解できない"世界"なのかー
そんな命題を突きつけるような物語には
鬼束ちひろの「月光」が似合うような気がする。




インソムニア

インソムニア