ロリヰタ。


ロリヰタ。


「人を好きになるのに免許証なんていらないよ」
「否。免許証が必要なんだよ。
 その免許証は取得するものじゃなく、
 生まれた時に既に持っているものだから、
 誰もが自分がその免許証をもっていることに気がつかない。
 僕もかつて持っていた。でも亡くしたんだ。」


「ロリヰタ」「ハネ」の二編からなる嶽本野ばらの小説集。


ロリータ服を愛好するものの決してロリコンではない筈の男性作家が
9歳のモデルに恋した話と
突然事故死した同級生との想い出のために、
天使の羽をモチーフとしたアクセサリーを作成し路上で販売する少女の物語は
自分の心の中に誰にある美学を貫くことの困難さと美しさを著している。


本来、自分の中にだけに存在するのが美学であり、
他人に理解されないゆえに、それを持ち貫く人は孤独である。
だがそのユニークさ故に知られるようになると、
その美学が誤解され、曲解されてしまう。
人間とは勝手な生き者で、流行っている時は持ち上げ、
したり顔で批評し賞賛の声を上げるが
なにかのキッカケでシオが引くと手のひらを返したような冷酷な仕打ちを与える。
そんな人間の醜さを残酷なまでに対比させているが
身を捧げてまでも自らの愛に忠実であろうとする人間の姿は
何者にも代え難い美しいと思う。


以上、恋の免許証紛失中の中年親父の感想文である。