日本の弁護を

これからの日本の復興は、君たちのような若い者に背負って貰わねばならない。
自分の弁護はいらないから、日本の弁護をしてくれ
平沼騏一郎(11月20日産経新聞・沢氏手記)


11月26日の読売新聞には、検証・戦争責任ということで
海外の歴史家3人からとったインタビュー記事が掲載され
それぞれ「拡張主義で日米衝突」「三国同盟致命的な決定」
「拙劣だった終局判断」との見出しが踊っていた。
あの時代の日本と日本人の全てが正しかったという気はなく
外部からの客観的な検証や考察を聞く必要性を認めるが
日本人がただ一方的に愚かで間違っていたというのは、受け入れ難いものがある。



11月20日産経新聞には、
東京裁判平沼騏一郎元首相の弁護人を務めた沢邦夫弁護士が
同裁判に関して綴った逸話や手記について記事があり
前述の平沼氏の言葉の他に、広田弘毅氏の

感銘を受けたのは広田弘毅元首相である。予想しなかった絞首刑の宣告に、傍聴しておられた二人の令嬢にかすかに手をあげられて別れを告げた。その泰然たる態度は、余程胆力のある方でなければ取れない。驚嘆と尊敬のほかはない

というエピソードなどが感慨深く紹介されていた。


自らが危地にありながらも、国や家族を思いやり毅然とした態度を示した先人を
誇りにこそすれ、非難する人間の神経が自分には理解できない。
何かあることにつけて、A級戦犯A級戦犯と騒ぎ立てる輩は
先人がどれほど天皇、国家、国民を愛していたかすら、思いもよらないだろう。


過日、産経新聞は、連載コラム「新地球日本史」で
終戦直後に自決した阿南惟幾や大西滝治郎ほか特攻した兵士を含めて
すべての自決者に深い理解と敬意を表したモーリス・パンゲの
「運命というものはただ単に人間に降りかかって来るだけのものではない。
 運命を愛し、運命にうち克つことを知らなければならない。
 『運命の愛』、それによって初めて心の平静を得られる。」
との言葉を引用しつつ、
「戦後の日本人は「近代日本の運命」を自覚せずに選択レベルで歴史を考え、
 『あのときこうすればよかった』と先人を裁くことばかりしてきた。」
と述べている。


私は、運命と闘い、その結果、不当ともいえる判決を受けながらも
従容と受け入れた先人達を深く尊敬する。
今年もまた12月23日が近づいてくる。

自死の日本史 (ちくま学芸文庫)

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