さだまさし


精霊流しスペシャル・マキシ・シングル

去年のあなたの想い出が
テープレコーダーからこぼれています
あなたのためにお友達も
集まってくれました
二人でこさえたお揃いの
浴衣も今夜は一人で着ます
せんこう花火が見えますか 空の上から
約束どおりに あなたの愛した
レコードも一緒に 流しましょう


精霊流し」 さだまさし

さだのコンサートは曲を歌う時間よりトークしている時間の方が長い。
彼は、高校時代に落語研究会に所属していたので
つぼを押さえたトークで観客を笑わせることが上手い。
だが、その上手いと云われるトークも、もとを辿れば
長崎から上京した高校時代に、方言というコンプレックスを取り除こうとして
寄席に通ったことが始まりだった。


この間、近所の温泉に行った時
さだまさしの自伝的小説である「精霊流し」のドラマが放映されていることに気が付いた。
ここ1、2週間ばかり忙しくて新聞すらろくすっぽ見ない日が続いたため
テレビ放送していることに気がつかなかった。
今年の夏に、原作の方を読んだので、まだおぼろげながら話の筋は覚えている。
彼が天才ソリストとして過ごした小学生時代から
彼の周囲を取り巻いていた善良なる人達との出会いと別れを
綴った物語で、時には声を上げて笑い、泣いてしまう内容だった。


彼が、今年の夏に長崎で平和コンサートを開いたときのトーク
「日本は今平和と云われていますが、
 親が子供を殺し、子供が親を殺す事件が多い社会が、
 本当に平和でいい世の中なのでしょうか。」といった類のことを述べており
この一言に少なくない衝撃を受けた。
彼は、ただ平和、平和と叫んでいる輩とは
人間としての深みが違うとことを遅ればせながら気が付いた。


小説版の「精霊流し」には、長崎で被爆した知人も登場し
人間の恨みや憎しみ、悲しみなどの生臭い感情を描きながら
それでいて物語にどこか懐かしさに似た諦観のようなものを感じさせる。
それは、夢に挫折し続けた人間だけ持つ優しさや強さのなしうる技なのかも知れない。