表と裏

裏と表 (幻冬舎文庫)


昔、関東にいた頃、遠出する時、よく金券ショップにいって、
ハイウェーカードや新幹線のチケットを安く購入していた。
こうしたチケットは、借金の返済に困った人間が
クレジットカードを利用して購入し、それを換金して返済に充てるために
金券ショップに持ち込むことは以前から知っていた。
だが、ヤン・ソギルの「表と裏」を読めば金券ショップの裏が
そうした認識は、ほんの一面に過ぎず、店の営業や運営が
いかにえげつなく深く危険なことかがわかる。


金券ショップには、毎日大量のハイウェーカードやビール券が持ち込まれている。
それは、経理担当の人間が小遣い稼ぎのために会社から横領したチケットや
政治家が選挙資金や裏金のロンダリングのために持ち込まれたものが多々あるが
時には、贓物や偽造品も扱われることがあり
ショップの裏側には魑魅魍魎が跋扈し巣食っている。


同業者間で1円、2円の差で売り上げの凌ぎを削る一方で、
何千万、時には何億円もの金が当たり前のように流通する業界
金と欲に、身体を、人生を翻弄される男と女の愛憎劇
幸せになるには金が必要なのか、そうした問いか掛けが
作中に散りばめられているかのような物語に
「金かなくても幸せになれる」と毅然と言い切ることがtacaQにはできない

ワールドカップのチケット一枚で一喜一憂しているうちが
幸せというかも知れない。