壬生義士伝

壬生義士伝〈上〉


南部藩吉村貫一郎新撰組隊士時代を扱かったもので、
自分の知ってる限り著者初の時代小説である。
本の帯には、感動巨編とかコピーがうってあり、その上書評も色々と聞いていたので
途中で大泣きするのは予想に難く、引っ越しの荷物が増えるのを承知で
立ち読みは止めて購入した。



家族を飢えより護る為に脱藩して、
殺すか殺されるかの白刃の下で新撰組の隊士として稼いだ金を里に送り、
義のために生き、義のために死んでいった主人公吉村貫一郎
親友である主人公に切腹を命じた後、あえて鬼と呼ばれることを肯定し、
悪者になり切った組頭の大野。
父の跡を追うように、函館五稜郭まで戦いに行き、十六で討ち死にした息子の嘉一郎。
幕府が新撰組を見放した中で、護ろうとした会津藩松平容保
そして新撰組の赤心を利用して使い捨てにした慶喜を人間の屑と呼び、
誠に誠で応えんとして散った浦賀奉行の中島三郎助。


そして、主人公が嫌いといいながら、鳥羽伏見の戦いで吉村を助けようとした新撰組第三隊長斉藤一
出てくる人物の言葉一つ一つが、時代の不合理と戦いながら、
歴史を彩り散っていった人間の叫びであり、その言葉の密度には、
ただ泣きながら読み進めていくしか術はなかった。


忠義とか礼節とかそういう言葉が絶えて久しいこの国で、
こうした本が売れてるところを見て、
この国も思ったより腐っちゃいねぇと自分勝手に納得しつつ
義のために生きられる人間になりたいと思った。