蝉しぐれ


蝉しぐれ (文春文庫)


江戸時代、架空の海坂藩を舞台に
ある藩士の半生を描いた藤沢周平の傑作小説。


海坂藩の普請組の牧家の養子に入った少年文四郎は
親友・小和田逸平とともに塾で学問を修め
剣の道場に通い腕を磨く毎日を過ごしていた。
そんなある日、義父が藩の政変に巻き込まれて切腹を申しつけられる。
追い出されるように住処を移り、人々の冷たい視線を受けながら
家名復興を希望に文四郎は健気に堪え忍ぶー。


2週間ほど前、NHKで作家藤沢周平の特集番組のようなものを放映しており
多くの人が感動したという「蝉しぐれ」とは如何なるものかと思い購読。
的外れの感想だが、真っ先に思い浮かべたのがある作家*1の言葉
「初恋の女と結ばれた男は信用できない。
 挫折を知らず成長した人間はそれに値しない」である。


順調な時に人の真価は分からない。
困難や苦境に遭遇した時に人としての価値が問われるー使い古された言葉だが
この小説は、大きな困難と挫折に遭いながらも、
くじけることなく真っ直ぐに生きる人間への賛歌に溢れている。
人生とはままならぬものではあるが、
ままならぬなら、ままならぬなりに生きるー
それが人間としての務めであることを
思い起こさせてくれる爽やかさな物語だったと思う。

*1:安倍穣二だったと思う