拮抗

拮抗 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

拮抗 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

今は亡きディック・フランスの競馬シリーズ
次男との共著で記した物語の主人公はブックメーカーだった。
心を病んだ妻をもつタルボットは
幼い頃に両親を交通事故でなくし
親代わりに育ててくれた祖父の仕事を継ぎ
イギリスの競馬場でブックメーカーとして
馬券を商っていた。


ある日、父と名乗る男が現れたもの
真実を確かめる前に
目の前で何者かに刺し殺されてしまう。
両親と祖父母の間で隠された秘密
ブックメーカーに対する偏見
オーストラリアではじめられた犯罪
妻の病気と義父との不仲
アシスタントの暴走
降りかかってきた災難や困難と戦い
すべてを知るー




この物語は、親を知らない主人公が
親の死にまつわる謎を
解き明かすことによって
親の存在を受け入れつつ
精神的な成長を遂げるー
それはあたかも共同執筆する次男に
未来を託すかのような
心情を感じた。




様々な人間の喜怒哀楽と
貌にあらわれることのない感情
多くの思惑が交錯し
手に汗をにぎる展開
使い古された言い回しだが
本作もいつもとかわらぬ高い水準の
知的興奮と喜びをあたたえてくれた。