椿山課長の七日間


仕事中にぽっくり逝った中年オヤジが
仕事やら家族やらが心配し
あの世の役人に懇願して
現世に戻り、自分に隠された友人、知人、家族の秘密を知り苦悩しながらも、
自分の人生の意味に納得するという浅田次郎原作のお涙頂戴の物語を
映画化したものである。


免許センターを皮肉って設定したあの世の死人受付所を
ソフトなイメージに変更するなど原作の設定をいくつか大きく変えていた。
思うに制作者サイドとして
"天国"というキリスト教ないしは西洋的なあの世をイメージさせて
物語をそれほど荒立てずに円満にもって流そうとしたのではないだろうか。
あるいは、その他の甦り物語を意識したのかも知れない。
結局、それは原作で一番泣ける場面である主人公の父親があの世の役人に詰め寄り
子供の身代わりに地獄に落とせと長台詞で魅せる独壇場のカットにつながり
原作を知る者としては、不満の残る作品となった。


映画単体としては、良く笑えるし良く泣けるしいい仕上がりだと思うが
浅田次郎独特の宗教観ないし世界観が無視され物語の奥行きがなくなったのが
非常に残念である。


椿山課長の七日間 (朝日文庫)

椿山課長の七日間 (朝日文庫)