満州国物語


満洲国物語 〈上〉満洲国物語 〈下〉



現在大連にいる電気羊さんのお勧めで購入。
とうの昔に絶版になっていたが、
たまたま中古がAmazonに出回っていた。


昭和初期に中国東北部に忽然と姿を現し
たった12年間で地上から消滅した幻の帝国
五族協和の高らかな精神を理想に掲げ、
その実日本ないしは関東軍が支配し
現地の中国人が偽満(ウェイマン)と呼んだ国は
歴史のタブー扱いされ、語ることが憚れ、伝わっている内容は驚くほど少ない。
日本の植民地主義、拡張主義で同国が生み落とされたことを否定しないが
果たしてそれは全て悪だったのだろうか。
話はそれるが"マオ"に書かれている共産党政権下の住民に比べれば
幸せだったとは言わないまでも、マシだったのではないかと思う。
もっともそれは程度の話で、他民族による支配、被支配というのは
利害より感情的な部分で問題となることが多い。



本書は、戦後中国東北部に生まれた中国人が執筆しているため
731部隊や平頂山事件などについて
日本共産党森村誠一ような記述がなされている。
厳密な意味で思想的に中立であるかは疑問だが
そこに暮らしていた人間の生活や考えを知るには適していると思う。


日本人料亭の娘と中国人洗濯屋の娘の二股をかける質屋の放蕩息子
抗日に奔走する兄と厭世観に囚われ出家する弟
日本人を憎みながらも、最後は日本人を哀れみ助けようとする馬賊
好きになった女性がみな不幸になってしまうことに嘆く片腕の中年男
大陸に夢を抱いてきたものの現実に神経をすり減らした開拓団
夫が日本軍憲兵に連行されため生活が困窮し、金持ちに娘ともどもに囲われる女性
etc…



偽満とよばれながらも、
そこに住む人々は喜び、悲しみ、愛し、憎み
それぞれが心に希望と夢、そして失望を抱えて生きて死んだ
それを全て否定するのは、無批判に肯定するのと同じくらい間違いではないだろうか。








マオ―誰も知らなかった毛沢東 上

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赤い月〈下〉 (新潮文庫)

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