日はまた昇る   


日はまた昇る 日本のこれからの15年


経済の本でありながら、
細かい数字よりも概略的な動向についての分析が殆どであり
読み進むのに、さほど専門的な知識を必要としなかった。


90年代初頭、当時絶頂だった日本経済の停滞を予想した「日はまた沈む」を
著したビル・エモット氏が、15年ぶりに日本経済について大胆な予測を述べている。
終身雇用制を捨てた日本の企業は生産コストを下げることが可能となり
小泉政権により田中角栄に代表される利益誘導型政治が終わりを告げたことにより
日本経済が再び力を取り戻すことを予想している。
一方、中国は市場規模は3倍になるものの労働争議などの増加により
経済の停滞を推測しているし、北朝鮮体制崩壊を予測している。


その他にも
アジアはEUのよう一つり経済圏として成立することは難しいが
日本がアジアの中で指導的な役割を果たすことが可能ではあり
経熱政冷の現在こじれている日中政府間の関係を修復することは
歴史問題の根源となっている靖国神社を国有化し、
A級戦犯の霊を分祀することで解決するとした意見を述べる一方で
中国も歴史問題を捏造していることを問題点として指摘していた。


読売新聞の書評によれば、エモット氏が拠点としているロンドンは
多くの情報が行き交い近未来的な経済動向を分析するには事欠かないそうである。
日本にも滞在したことのあるエモット氏は、そうした情報と合わせて
日本と日本人について的確な分析を行っており、
彼の言葉の大半は現実のものになるだろうと思われる。
新富裕層の代表として取り上げた堀江の失脚すら予想していたのには驚きだった。



思えば、80年代後半、アメリカの会社やビルを買いまくり
アメリカ人の魂を日本に渡すなとジャパンパッシングまで起こったが
00年代には、銀行や企業がハゲタカのようなアメリカ企業
食い荒らされるところまで落ちた。
エモット氏は、日本経済の復活を予想しているが
政府の長期的な戦略がなき等しい今の現状では、たとえ経済が興隆しても
一時的なものになるだろう。


経済は確かに重要な問題だが、それよりも日本人の心の復興が重要ではないかと
トンチンカンな感想を述べておく。





祖国とは国語 (新潮文庫)

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