アメリカの新国家戦略が日本を襲う

アメリカの新国家戦略が日本を襲う



日高義樹によれば米国の戦略が
2001年以降大きく変わったという。
もともと米国は米ソ対立の冷戦構造を前提に基本戦略をたてていたが
9.11テロ事件以降、対テロを中心にした戦略方針に大きく変更した。
それまでの戦略方針NSS68を破棄し、
NSC2001という方針を新たに打ち出したのである。
以後、毎年必要に応じて修正を加え、現在はNSC2006を確立している。
NSC2006は長期的には経済及び軍事の台頭が著しい中国を封じ込め
短期的には中東地域の早急な安定化を狙いとしている。


日高氏の著書にによれば変化の激しい国際情勢の中、
米国において日本の影響力は減少する傾向にあるという。
それらは経済は中国や韓国にキャッチアップされてしまうと考えられ
米国にとって日本が経済的に魅力のあるパートナーとは
言い難い状況であることや
米国政府内から知日派がいなくなってしまったことに加えて
総理就任以来半年以上、米国を訪問しなかった安倍首相に対して
米国政府が不信感を持っていることが大きいようだ。
先日訪問した首相が非国賓待遇を受けたことなどを根拠として日高氏は
米国が安倍首相と日本政府に低い評価を下している事実を裏付けている。


現在米国はトランスフォームと呼ぶ米軍再編を実施しているが
これについて日本側の認識が低いことも問題があるようだ。
日本側はトランスフォームをだだの兵力再編と認識しているようだが
トランスフォームとは、運用上の要求に合わせて
兵力を随時変形させることを意味するものであり
兵員何万人、拠点はどこそこにするというような中長期的な
兵力の固定化を意味するものではない。
この認識に欠ける日本政府ー現防衛大臣は米国から
全く信頼されていないないと分析している。
そして辛辣な発言の多い麻生外相に対しても
米国は良い印象を持っていないことを記している。



以前、被害者家族に深い興味を示したブッシュ現大統領ではあるが
厳しいイラク情勢の前に
北朝鮮は核開発を含めとりあえず解決すれば良い類の問題として扱われ
その処理を国務省に一任せざるを得なくなってしまった。


もともともブッシュの政権の特徴としては
担当者に責任と権限を与えて一括処理を命じるー所謂丸投げする傾向がある。
この方法は業務範囲が狭ければ問題はないが
各政策担当官同士で連携がとっていないため
政策の対象が広範になってくると省庁間でバッティングして
機能不全に陥ることがままある。
偽札製造に神経を尖らせている米財務省
北朝鮮問題の解決を進める米国務省間で軋轢がおきたのも
こうした理由が一つにはある。



もし日高氏の著述が正しいのであれぱ、
米国政府はイラク問題を片づけるのに精一杯であり
他の問題にコミットメントする余裕がなくっている。
そして日本は、北朝鮮の拉致と核開発ー日本に直結する安全保障上の課題を
単独で解決をしなければならない状況にある。


首相、防衛省、外相と主要な政府要人が
米国から無視ないしは軽視されるというこのうえない苦境の中で
日本の明日はあるのだろうか。