見上げてごらん夜の星を

見上げてごらん 夜の星を 小さな星の 小さな光りが
ささやかな幸せを うたってる
見上げてごらん 夜の星を ぼくらのように 名もない星が
ささやかな幸せを 祈ってる


手をつなごう ぼくと 追いかけよう 夢を
二人なら 苦しくなんかないさ 見上げてごらん 夜の星を
小さな星の 小さな光りが ささやかな幸せを うたってる
見上げてごらん 夜の星を ぼくらのように 名もない星が
ささやかな幸せを 祈ってる


見上げてごらん夜の星を作詞/永六輔 作曲/いずみたく


今年の春、ちょっとした縁があり慰霊のため御巣鷹山に登ってきた。



事故から20年近くの時間がたっていたというのに、
現場は事故の痕跡をとどめる物が多く存在し
事故の悲惨さに慄然としやや陰鬱な心持ちとなった。
その下山中のことであるが、どこからともなく響いてきたアルトサックスの音色を聞いた。
最初は空耳かと、自分の耳を疑ったのだが、その音は徐々に大きくなった。
しばらくして、当日慰霊登山された方が吹いていることに気がついた。
犠牲者の中に歌手の坂本九さんもおられたのだから、
そうした関係者がいても何の不思議はないのだ。
その時、山全体にやさしく響いた曲は「見上げてごらん夜の星を」だった。
これほど、この場所にふさわしい曲はないと思いながら、犠牲者の冥福を静かに願った。


JAL123便が御巣鷹の尾根に墜落して今日で20年になった。
事故原因については、いまだ憶測も飛び交い
事故調査委員会の結論に納得していない人も多くいるようだが、
加藤寛一郎氏の「壊れた垂直尾翼」を読む限り、
圧力隔壁の修理ミスでほぼ間違いないと思われる。


この問題を複雑にして、いたずらに感情の対立を長引かせている原因の多くは
無知なマスコミにあると私は思う。
マスコミだけでなく、航空力学の知識のない人間の無分別な意見が
この問題を複雑にしている、と私は断言する。
墜落する直前、垂直尾翼の破壊によって、事故機がほぼ操縦不能の状態に陥っていたのは
異論のないところだが、
そもそも垂直尾翼がないと航空機は曲がらないものなのか、といえばそうではない。
航空機は、垂直尾翼のラダーだけで曲がるのではなく
主に主翼の補助翼(エルロン)で姿勢を傾けて、曲がるのである。
わかりやすく云えば、バイクのように飛行機は、バンクさせた方向に旋回する。
そうした基本的な知識が欠如しているにもかかわらず、事故の原因を云々したところで
正しい結論が得られるわけがない。


勿論、そうしたことを被害者の家族に理解しろというわけではないが
マスコミや俄航空事故解説者の痴れ言がなければ、
遺族が感情を逆撫でされたであろう回数も、もっと少なかった筈だ。
また、悲惨な現場で懸命の救助作業を妨害した記者や
自衛隊が嫌いだからという理由で、自衛隊の救助活動の記事をボツにした新聞社など
あらゆる偏見と誤解、非常識が、多くの犠牲者や関係者の努力を踏みにじったきたことに
私は云いようのない憤りを覚える。



現在、御巣鷹山は、上野村村長の黒澤氏の好意と努力の結果、
霊園として管理されている。
そして高齢化する遺族の方のために、車両で参拝できるよう舗装道路を敷設中である。
文字通り降ってきた災難だというのに
犠牲者の霊を慰めるため、あらゆる努力を惜しまない上野村の方々には
ただ頭の下がる思いである。


憤りや怒りは語り尽くせぬが、
今日はただ夜空の星に犠牲者の御霊健やかなることを祈る。







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沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)

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クライマーズ・ハイ

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