プロ野球では、ピッチャーが直球ではなく変化球で交わすピッチングを覚えることを
「一皮むける」と表現をすることがあるそうだ。
以前、引退した西武の渡辺久信ノーヒットノーランをした時
東尾が「これで一皮むけるのが遅れるな。」とコメントしたことがあった。
それから程なく、自分のストレートがまだ通用すると思った渡辺久信は、
勝ち星に伸び悩むようになったという。


アトランタのQBヴィックが驚異的な走りを見せたWEEK2の試合をいくつか見て
黒人QBが増えたなということを感じた。目につくところがあげれば
マクナブ(フィアデルフィア)、マクネア(テネシー)、ヴィック(アトランタ)、
カルペッパー(ミネソタ)などである。
これらのQBは、足が速くそれを生かしたプレーが多いとことからモバイルQBなどと呼ばれている。
QBというポジションが黒人に解放され、この手のQBが増えた。
黒人特有の運動能力を活用した結果なのだが、
ではこれから、この手のQBがNFLの主流になるだろうか?


否ーだと思う。黒人QBが増えるだろうが
走るQBがNFLのメインストリームになってもそれは一時期だけの話だと思う。
以前、フィアデルフィアにカニンガムという運動能力の優れたQBがいた。
走り出した止められないくらい足が速かったのだが
スーパーボウルを4度制したブラッドショー
「あいつはQBに向いていない、セーフテイにでもなった方がいい」などとコメントをしていた。
禿のブラッドショーは、髪の毛があるQBが嫌いだからという皮肉もあったが
事実NFLではモバイルQBは、殆ど成功していない。
これは推論でしかないのだが、足があるということはそれに頼ってしまい
結果的に攻撃のオプションが少なくなってしまうのではないだろうか。


引退後、セールスマンから復帰したカニンガムは走る力はなかったが
バイキングで14勝というキャリアハイの成績を残した。
ピッツバーグのスチュアートも自慢の足を封印してからAFCの覇を争うところまで登りつめた。
私見だが、QBはアタッカーでななく、司令塔ではないとフットボールは勝てないのだ。
自分の見る限りマクネアはとうに一皮向け、カルペッパーはそのステップに戸惑いつつ
マクナブはオーエンスというレシーバーを得て、そのステップを登っている。
自分の足に酔っているヴイックが栄光を掴むのは当分の先の話かも知れない。