精霊流し

精霊流し

昨日は、歯の詰め物がとれたので治療のために歯医者へ行った。
待ち時間が長いだろういうことで、さだまさしの「精霊流し」をもっていった。
さだまさしのアルバムを買ったことはないのだが、本は何冊か買ったことがある。
彼の噺は、非常に愉快でコンサートでは歌より、話している時間の方が長くても
彼のファンは文句を言わないらしいが
文章もまた、コンサートの噺同様、絶妙な味で受け手を魅了してやまない。



早い時間に寝るのが習慣だった中高の頃、唯一の例外が土曜の夜だった。
ラジオの周波数を1134khzに合わせて、スピーカーから聞こえてくる
さだまさしの声と歌を楽しんでいた。
高校の頃の落語研究会に入っていたというさだは、
ウイットに富んだユーモアな会話で、笑いを振りまきながらDJをしていた。
彼のトークは、本当に面白かった。


書き下ろしの自伝的小説のタイトルは、彼のクレープ時代のヒット曲にちなんだものだが、
元々は長崎で行われる送り盆の行事のことである。
精霊流しには、死者の御霊を船に載せて、西方浄土に送るという意味があるのだが
さだは、その半生で多くの人と出会い、別れを重ねており
小説「精霊流し」は、彼の大事な人の魂を彼岸へ送り届けるために書かれている。
母、祖母、生まれてくる筈だった弟か妹、まさしを戦友と呼ぶバイオリニスト、叔母、
そして歌となった従兄弟
読んでいて、時には笑い、時に胸が締め付けられる程切なくなる。


作品の一番最後には、「君を忘れない」というタイトルで、亡き従兄の手紙にまつわる
エピソードが著されているが、彼のやさしさが心に染みて、涙がにじんでしまった。
大勢の人がいる場所で読む代物ではなかった(苦笑)