天切り松闇がたり ライムライト

ライムライト 【limelight】

1 石灰片を酸水素炎で熱して強い白色光を出す装置。一九世紀後半,西欧の劇場で舞台照明に使われた。
2 名声。評判。

この小説を読むまで
ライムライトが照明装置であることを
知らなかった。


さて、浅田次郎の「天切り松闇がたり」シリーズ第五作
あちこちの留置所に出入りしては自身の思い出噺を
吹きまくる稀代の盗人の語りが
軍人が幅を利かせなにやら時代が
きな臭くなってきた昭和の世相を背景に
冴えまくる。


義理を通し、人情を忘れない義賊など
講談の中でしか存在しないと
誰もが承知しているが、
権力に媚びず、それぞれの筋を通す生き方は
生活に倦んだ人間にとって
目映く写り、つい喝采を送りたくなってしまう。


表題作のライムライトは、
チャップリンの代表作と掛けて
彼との盗人らのあり得ない邂逅を綴った話であり
ひさびさに、彼らしい作品にまとまっていたと思う。