ツアー


NFLを観た後、チャンネルをBSのままにしていたら
ロシアプーチン政権の特集番組が始まったのでこれを眺めていた。
共産ロシアが崩壊してマスコミに対してオーブンになったとはいえ
報道には規制が多く、政権に批判的なメディアはロシア国内にはそう多くない。
BBCが制作したこの番組も多くの制約があったことを示していた。
番組でとりあげていなかったが、
プーチン政権に批判的なジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤ女史が
何者かに殺されるという事件が先日あったことを考えれば
ロシアのメディアが旧西側並に自由が保障されているとは思えない。


共産政権崩壊以降、ロシアに導入された自由経済と民主主義は
一部に経済富裕層を産んだが、多くは経済的混乱に伴う困窮をもたらした。
共産党政権を打ち倒した英雄のエリツィンは、体の不調から大統領職を辞任し
ロシアは混迷を極めた。
しかし、エリツィンの跡を継いだプーチン政権は強いロシアを訴え
エネルギー産業を国有化するなどして経済を混乱から立て直し国家を再建した。
再建というよりは以前の独裁的な強権体制に戻したというのが正確かも知れない。
それもその筈で、プーチンKGBの出身であり
同政権が中央強権的な体質になるのは当然の帰結である。


番組ではロシア政府が民主主義を制限する方向へ進むことを懸念していたようだが
独裁が悪いとか、民主主義が良いとかいう次元の問題でなく
広大な領地を治めるには、強権的な体質に
成らざるを得ないのが実情ではないかと思う。
自由と民主主義、人権を尊重したしところで、国家は混乱するだけで
それによって得する人間は誰もいないし、また民衆もそれを望んでいない。
今のロシアとその政権は、多くのロシア国民に受け入れられていることからも
現在の体制が長期間にわたり続くことも有り得る。
こうしてみると今のロシアは、故レーガン大統領によって
ベトナム症候群から立ち直った時期のアメリカとよく似ているような気がする。


ただ強いロシアの復活は、日本にとってあまり歓迎できるものではない。
世界経済に混乱をもたらすよりはマシだが
日本は経済的にロシアと対立する場面が今後増えてくるだろう。
日本が絡んでいるサハリン開発油田の見直しも
自然環境にかこつけたロシア国内勢力の台頭の影響が囁かれている。


さらにKGB出身の大統領らしく諜報機関の充実も見逃すことが出来ない。
ソビエト崩壊直後は、ロンドンにロシアの諜報員は一人いるか、
いないかだったのが、現在は30人を越え、
KGBは以前のレベルに戻ったと観測する筋もある。



日本は法治国家、中国は人治国家 ロシアは力治国家と某新聞で形容していたが
ロシアを力で支配する大統領と日本は対等にわたりあえるだろうか。