新「罪と罰」


学校で制服が着せられるのは人権侵害だ、とか、
格差社会が固定して機会がなくなったとか政府を批判する人間がこの国にいるが
世界の残酷なまでに厳しい現実を目の当たりにして、
そうした戯れ言を言えるかどうか聞いてみたいような気がする。


ロシアを特集したBSの番組を見た。
現代ロシアの腐敗がここまで酷いとは正直思わなかった。
警察や検察は仕事をしているように見せかけるために
現場の人間に逮捕のノルマを課し、
現場は現場で何も分からない浮浪者を犯罪者に仕立てあげて
次から次へと 牢獄に放り込む。
政府高官や警察の高級幹部は、企業から金を受け取り、
企業の商売敵を些細な罪やでっちあけで告発、逮捕し、
権力基盤をより強固にしては私腹を肥やす。


腐敗は司法機構にも及び
真の犯罪者を裁こうとする裁判官にも圧力がかけられる。
不正を糺し社会正義を貫こうとする良識ある人々は
次々と公職を罷免され、権力の濫用を黙認する者だけが法の審理者となり
無実の者が次から次へと刑務所に送る。
このおそぞましい構図は一体何なのか。
番組中、ロシアの犯罪を調査している人間は
有罪となった者のうち、無実やでっちあけで罪を被せられた人間の比率は
90%であると数字をあげていた。
地方では職にありつけない貧しい人間が野菜を盗んでは捕まり
その罰金が払えず刑務所に収容させる。
貧しいことは恥ではない、貧しいままでいることが恥なのだといった先人がいるが
このロシアの現実を前にしては、啓蒙する言葉すら見つからない。


プーチンが政権をとり、強いロシアが復活し、
人々はそれなりに自由を味わい、良いことずくめのように見えるが
光り輝いている分だけ、その闇も深く
結局、ロシアも中国同様、
弱いこと、貧しいことは、それだけで罪に値するという社会なのかも知れない。


日本人に生まれて良かったと思う。