Jazz

私がしなければいけないのは、音楽を大事にすることだけだ。

ビル・エヴァンス



アパートのトイメンに越してきた後輩から
ピーター・ペッティンガー著の「ビル・エヴァンス」借りて読んだ。
ジャズを聴くのは好きだが、音楽的素養が0に等しいtacaQにとって
音楽の解説がふんだんに出てくるこのエヴァンスの伝記は
正直言って難解で面白みに欠けたが
それでも最後まで目を通したのは、彼の音楽が好きだったからに他ならない。
勿論、エヴァンスの人生や奏法を知ったところで、
彼の音楽の全てを理解できる訳ないことなど十分承知している。

グラミー賞を数度受賞したエヴァンスだが、
彼の音楽人生は常に満たされていたとは云えないようだ。
彼は鍵盤の前では何をすべきかを知り尽くしていたが
ステージ以外では身を守る術を知らない赤子のように世間の波に翻弄され続けた。

ヘロインやコカインを服用し、肝炎を患い激痛に襲われ
友人や恋人、身内の死にその都度打ちのめされながらも鍵盤を叩き続けた。

ヘロインの打ちすぎで右手が動かなくても
左手とペダリングだけでステージを勤め上げたり
借金返済のためにアルバム作成に精力的に動くなどを見ていれば
それだからこそピアノを弾き続けたというべきかも知れない。

だとすれば、彼の音楽に対する”動機”はあまりにも痛ましい。


「彼の死は歴史上一番時間をかけた自殺だった」とは
彼の友人にして作家のジーン・リースの言葉だが
彼の人生を一言でまとめれば、狂気の人生と云える。
哀しみの色に彩られた彼の人生だが、
それでも彼の残した音楽は色褪せるものではない、私は彼の曲を愛し続ける。