影勝、かつて合戦十数土におよぶといえども、 いまだ敵に敗をとったことはない。諸子、われを援けよ
徳川家康は太閤秀吉なきあと、秀吉の遺命に背き
豊臣恩顧の大名を篭絡しては切り崩し、
天下人へ着々と歩をすすめる。
秀吉に厚遇されたとはいえ、豊臣の家臣として
頭を抑えつけられていた上杉影勝は、謙信公の家門との矜持をいだき
秀吉の死去を期に独立独歩の意思をあらわにする。
何者の風下には立たないことを潔しとする影勝とその家老直江兼継
幼なじみにして、以心伝心の主従は
天下統一への道筋が定まりつつあるなか
名門上杉家の心意気を天下に示す。
藤沢周平の時代小説。
豊臣政権下における上杉家の地位を盤石にするための
石田三成と通じた誼み
手下の忍喜六らと伊賀衆が繰り広げる暗闘
家康家臣の本多平八と因縁ある兄妹の成長など
兼継を取り巻く人間の喜怒哀楽が丹念に書き込まれてあり
読み応えのある娯楽小説となっている。
合戦の場面がすくなく短いきらいがあるが
徳川に絶縁の書を送る場面は痛快無比の一言
講談とはいえ、上杉と直江に地の利あらばと
思わずにはいられない。
- 作者: 藤沢周平
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