五分の魂


土曜日のBSスポーツ情熱大陸
世界で最初に背面跳びを飛んだメキシコオリンピック
金メダリスト・フォスベリーの特集だった。
ジャンプの技術として完成されたベリロール飛びのままでは
おそらく二流以下の選手で終わったであろうフォスベリーは
コーチの反対や周囲の嘲笑をよそに
独自の飛び方にこだわり、
高校、大学と新しく"珍妙な"跳躍方法に磨きをかけ
頭角を現し世界の頂点に達した。



勝ち目のない相手に挑む時、
スタンスとして二つのあり方があると思う。
一つは既存の方法で戦い、相手のミスや味方の幸運などの僥倖に頼む戦い方と
相手の想定外に方法で奇襲し、戦いの主導権を掴み勝ち取るやり方である。
奇襲といえば聞こえがいいが、戦いの定石を守って勝つのが王道である以上、
奇襲を採用するのは外道であり、なおかつ大ゴケする可能性が高い。
弱者が強者を破った多くの例を見る限り、
奇襲云々ではなくそうしたリスクを冒してまでも勝とうとする決意や執念が
先にあり、新技術や新戦法はあとからついてくることの方が多い。


既存の技術やルールの隙間をつくような手法に
アメリカンフットボールフォワードパスが導入された頃の
エピソードをふと連想した。
アメリカ最強の陸軍士官学校相手に、弱小ノートルダム
パスを攻撃の基本に据えて番狂わせを演じて
その後のフットボールシーンを大きく変化させた。


もはや目新しくなくなったバレーボールの一人時間差やフライングレシーブなどは
ミュンヘンで金を目指し、選手の怪我を全く厭わなかった松平監督(当時)の
執念から生まれた。


勝負に対する飽くなき渇望が、新たなる技術を生み、時代を切り開くー
だからスポーツは面白いのだと思う。