陰日向に咲く

陰日向に咲く


イタくて、笑えて、ホロリとしてしまう劇団一人の短編小説集。
オビには、恩田陸が、もう一冊書いてもらわなきゃ、と
賞賛とも羨望ともつかぬ言葉が載せられていたが
さもありなんである。


ホームレス、カメラウーマンを目指す尻軽のフリーター、
賞味期限切れ間近のアイドルをおっかけるオタク、
売れない芸人とそれに惚れて家出した女の子etc…
彼らと彼女らを微妙にスピンオフさせて紡ぐオムニバス形式なのだが
どの物語も客観的に観て、かなりイタイ人達が主人公である。
たとえるならば、「嫌われ松子の一生」のようにイタイのだが
それほど陰惨な印象が残らない。


それは、一人称で自分のイタイ人生を語り、おバカな生き方を語るのだが
その語りクチが女子高生のケータイ小説の如くであり
平坦で抑揚の少ない文章で綴られるその語り口に
ああ、こんな勘違いしている奴よくいるよねー、とある種の親近感を覚えてしまう。
そして、バカだなーと読み進めていくうちに
つい人物に感情が移入してしまうのだが
その巧さに
作者である劇団一人に並々ならぬ力量を感じる。