米中冷戦

米中冷戦の始まりを知らない日本人


今年4月中国胡錦涛首相が訪米し演説する際、
亡命中の中国人が華語で同氏を罵倒した一幕があった。
胡錦涛に暴言を浴びせた観客はSPによって退場させらたが、
「この件は中国国内では報道されないから問題ない」と、
嘯いた関係者がいたとかいないとか。
胡錦涛は増大する経済力と軍事力を背景に、
米中二大時代を到来を印象づけようと演出を試みたが、
冷や水を浴びせられた格好となった。
この罵倒事件がアメリカ政府のヤラセか(あるいは演出)否か知らないが
共同宣言もないまま首脳会談は低調なまま終了し、
中国側の狙いは見事空振りした。


ワールドカップ報道でベタ記事扱いされているが
訪米した小泉首相エアフォースワンに搭乗させるなど
アメリカ政府の小泉首相に対するの厚遇ぶりを比較した場合、
ブッシュ大統領のある種の意図を読み取るはさほど難しいことではない。



日高義樹の「米中冷戦の始まりを知らない日本人」によれば
今年発表したQDB*1には中国が米国にとって
軍事的脅威になりつつあることを指摘しているという。
そうした状況でありながらアメリカは在日米軍兵力を削減している。
これは一見矛盾しているようにみえるが、ラムズフェルド国防長官の戦略にそって
常時前方展開させている部隊を減らし、
緊急展開できる兵力をグアムやアメリカ本土に集結させているからに過ぎない。
今年の春にグアムに移転する米軍の費用を日本が出すに至ったのは
グアムが中国の大洋進出を押さえるアジア安定のキーステーションとなるからであり
その恩恵を享受するのが日本であることを政府が理解した結果である。
もっとも、米軍の戦力再編(トラスフォーメーション)は
ラムズフェルド国防長官主導で進められており
制服組から強硬な反発が生じているので
計画通り物事が順調に進む保障はどこにもない。



また同書に記載されていたことだが、
イラクの占領統治にアメリカはかなり手こずっていが、明るい材料も少なくない。
経済の復興は進んでおり、
すでに昨年で開戦前のフセイン大統領時代のそれを上回ったという。
国連による経済制裁による影響があったかも知れないが、
イラクの復興は軌道にのった。
2005年で2,200件あまりのテロが発生したが、
それでもイラク国民はフセイン時代への復帰を望んでいる者は殆どいない。
余談だが、2,200件というととてつもなく多いような数が気がするが
驚くなかれ中国は2005年1年間だけでで5万7千件の暴動が起きたという。
国土も人口も違い一概に比較できないが、
どこかの国もかなり危険であることを忘れてはならない。


ジャーナリストの櫻井よし子氏によれば、
中国はアメリカに対して使用している外交カード
北朝鮮やイランなどの関係を基にしたものであり、
友好国というより敵対国の切るようなカードに近いものがあるそうだ。
外にはアメリカ、内には民族問題など、
中国抱えている火薬に火がつくのもそう遠い日ではないだろう。

*1:Quadrennial Defense Review Report=4 年ごとの国防戦略見直し