恨み


米軍のヘリが避難所にやってきた。
いっぱい、いっぱい食料を持ってやってきた。
避難所にいたみんなが感謝の言葉を口にした。
そんな中で差し出された食料を前にじっとしている
爺がいた。
爺は、60年前の戦争で、親兄弟が空襲で殺されて
家が焼かれて以来アメリカ人が大嫌いだった。


爺は食料を配っているアメリカ兵の前まで進み出た。
「やい、アメリカ」
片言の日本で食料を配布していたアメリカ兵が手を止めた。
「俺は、60年前に、アメリカに家を焼かれて、家族を殺された」
爺は怖い顔していた。
「今でも、沖縄でも悪さして、沖縄の人さ苦しめてる
いや沖縄だけでねぇ、イラクでもいっぱい人さ殺してる」
アメリカ兵は、真剣に爺の顔を見ていた。


アメリカ兵は、英語が少しわかる人に爺の言葉を通訳してもらい
天を仰いだ。



「なんで、お前は俺たちば助けようとすんだ?
なんで食料さいっぱいもってくる?」


通訳は、申し訳なさそうに爺の言葉を伝えた。
アメリカ兵も怖い顔になった。

爺にそっと近寄って袖のワッペンを指した。
そして片言の日本語で爺に言った。

「ト・モ・ダ・チ」
爺の顔から険しさがすっと消えた。
アメリカ兵は爺の手を握りながら笑顔でこういった。
「nice to meet you」