SPACE RACE〜冷戦と二人の天才

数年前にNHKで放映されたBBCのドキュメントドラマ。
WW２後、宇宙開発において異彩を放った二人の科学者
ロシア人、セルゲイ・コロリョフと
ドイツ人、フォン・ブラウンを主人公に据えて
描いた硬派の作品である。

両者は、一国のロケット開発を担う天才的な頭脳のほか
目的のためには手段を選ばぬ非情さを持ち合わせる
同じタイプの科学者として描かれている。

どちらも宇宙開発といいながら
アメリカのソビエトの両大国の覇権争い
つまりは核ミサイルロケットの開発という負の側面をもつ。
そうした時流と敵の存在をうまく活用し、
夢と呼ぶにはあまりにも過酷な目標に突き進んだ二人
内なる敵ー、時には政治的な思惑に翻弄されながらも
現実のステップを一歩ずつ上る二人の見えざる戦いを
見応えのあるものに仕上げられていた。

明らかに場違いな感想だが
ソビエトの開発の様相を見ていて
戦時中の日本の航空機開発を想像した。
科学技術の差に由来する開発環境、
先進技術の意義に無理解な政治
貧弱な資金などなど、悪条件でアメリカに戦いを挑む様は
立場と姿と変えた先人そのもののように思えた。
あるいは、アメリカに挑戦とするということは
そのような圧倒的な不利を承知した上でないと
その権利すら得ることができないのかもしれない。

9800円という結構な値段のわりには
オリジナルの音声もなければ、特典もついてない
というNHKエンタープライズの殿様商売に反発して
長い間購入を控えていたりもしたが
声を当てた声優の演技は十分に満足するものであり
一見の価値はある。