闇の子供たち


闇の子供たち (幻冬舎文庫)



このおぞましい現実を前に何を述べるべきだろうか。


この小説は、フィクションであるから
登場する人物や団体は架空であるにも関わらず
目を背けたくなる事実に打ちのめされ
のど元に匕首を突きつけられたような気分になった。


貧しいタイの山奥では
およそ1万バーツ、日本円にして1万そこそこの値段で
子供が売買されている。
貧しい家庭は、子供を売った金で中古家電製品を購入する。
その子供の未来にどんな現実が待っているかも知らずに。


子供が売り買いされるのは、貧しい農村だけでなく
難民キャンプでも、難民を保護すべき警備兵が
子供達を誘拐し、業者に納入している。
そうして集められた子供は、十にも満たない子供達は
商品として仕込まれて、
日々金持ちのおもちゃとして愛玩される。
そして客の意にそわない態度をすれば
苛烈な虐待が子供らを待ち受けており
彼ら、彼女らは動物のように働かされる。


子供を買春する大人達は、「新しい愛」と欺瞞で
己の欲望を飾り、年端もいかない子供達を
次から次へとむさぼり、文字通り食い物にする。
そして、病気になった子供は
商品価値なしとしてゴミのように捨てられる。
そう、比喩ではなく、ゴミ袋に入れられて
ゴミ運搬車に乗せられた、ゴミ捨て場に捨てられるのである。


そうした子供が命からがら故郷に帰っても
待ち受けるのは病気に対する偏見と迫害であり
見るもむごたらしくやせ細り、
挙げ句、父親に焼き殺されたという。


物語は、児童売春、臓器売買の実態について
そのおぞましさを訴えているが
前半の児童売春に比べて、後半部分の臓器売買は
どことなく迫力を欠いていた。
推測するにはそれは児童売春は広く浅く営まれているが
臓器売買は、売春に比べ少数で高価かつ
違法性が強く、関係者の口が堅いためではないだろうか。
ただ、現実に東南アジアのストリートチルドレン
誘拐され、その内臓を抜き取られ、売買されているのは
容易に推測が可能な結論である。


このおそぞましい現実を前に何ができるか
小説に登場するNPOの人物にも似たため息がもれる。