親父の愛した数式

最近、母親に4年前になくなった父親に
似てきたと云われたことがある。
自分自身、なんとなくそんなものかなと感じているが、
親父が身に纏っていた空気は持っていないと思う。



映画「博士の愛した数」で記憶障害の数学者役をしていた
寺尾聰の演技に涙がこぼれてきた。
親父に似ていたからだ。
顔ではなく、茫洋とした雰囲気、その空気が、
高校の数学教諭であった父親にそっくりだった。


白髪の交じった頭、
数学雑誌を愛読し、
時たま自分の世界で数式を展開し
煙草をくゆらし
他人の目にどう映ろうと自分の考え方を押しつけ
違ったところといえば、
野球と野菜の好き嫌いなところくらいだっだ。
そんな寺尾聰の演技に
父親を思わずにいられなかった。




4年ぶりに見つけた父親を思いつつ
何年か後、何かの映画で
誰か自分を連想してくれることはあるのだろうかと
想像してみる