サムライの死に様


「大研究 昭和陸軍〜なぜ国家を破滅させたのか」の特集に惹かれて
文藝春秋なるものを生まれて初めて買った。
立ち読みしたり借り読みしたことはあったが、
お足を払ったのは今回が初めてである。


昭和陸軍の中枢であった人物を、伝聞だけでなく
直接見聞きした複数の体験をもとに語っていた点がユニークだが
今までの人物評価の域をでるものでなく、特に目新しいものはなかったと思う。


むしろ、柳田邦男の「新・ガン50人の勇気」の方が印象深かった。
ハナ肇から越路吹雪といったここ数年ガンで亡くなった芸能人らの死に様を
綴っていたのだが、特に芦田伸介の散り際は見事だと思った。


医者から肝臓癌を宣告されたが、役者稼業を続けるために
「大きな手術をしなければ5年は続けられます」という医者の言葉に信じ、
簡易な手術と短い期間の入院で現場に復帰し、
根治治療はせずに、対処療法だけで舞台やテレビに出演し続けた。
時間の進行とともに病状も悪化し、
体調がすぐれずにNGを多く出すようになったが、
それでも芝居に妥協せずに、長台詞も納得のいくまでテリイクを重ねたというから
役者バカもこれに極まれりである。


サムライとはいつでも死ねる者ではなく、
いつ死んでもいい覚悟でいる者の謂い。
自分がそんな死に方をできるかどうか自信はないが
芦田伸介のように生きて死ねたら、と思う。