恋愛詐欺師


恋愛詐欺師 (文春文庫)

岩井志麻子の11のショートストーリーからなる短編集。
登場する女性達は様々で
風俗嬢あり、お嬢もどきあり、アイドルもどきあり、暴走族ありと多彩たが
岩井独特の歯切れのいい言い回しと描写で
主人公の行動や心情、ポリシーを語っているのは共通である。


「偽偽満州」の文庫版では花村萬月が解説を書いていたが
萬月に似通った部分も少なくない。
暴力と性を禁忌とせずに、人間の偽らない感情と本能であり
それを表現することにいささかも衒いや良心の呵責を感じさせない。
オビには黒い美学に彩られた11の物語と打ってあったが、
まさに黒い美学と呼ぶに相応しい女性特有の負の論理がそこにあった。


ブスをブスと表現し、美人だから中身も美人とは限らないといった類の
ストレートな言い方が、彼女の持ち味であり、それがウリである。