ケン・ナップシク

心から父を愛する娘をもつ世界中の警官のすべてに捧げる
そして、誰よりわたしのパパへ


究極の警官


パパが学校まで私を迎えにきてくれた。
けれど緊張を隠しきれないようだった。
今夜は一斉取り締まり
興奮が私にもつたわってくる


今夜、どこかの空き地で
麻薬取引があるという
パパは売人を逮捕し
究極の警官になるだろう


家の前に車を停めると
パパは私にキスをして、強く抱きしめた
「じゃあな」と、車をスタートさせながら、パパは言った。
「祈っていてくれ、今夜、パパのために」


いつものように私は家で
パパから連絡があるのを待っていた。
うまく逮捕できればいい
麻薬売人なんかやっければいい


夜遅く、テレビのニュースを見た
どうなったか気を揉みながら
アナウサーがそのニュースを読んだ時
私の心は凍りついた


厳しい表情したアナウサーが
怒ったような声でニュースを伝えていた
目に涙があふれ、私は思った。
「ああ、どうしてパパは配管工じやなかったの。」


声をかぎりに叫びだした私
こみあげてくる悲しさ、そして怒り。
そしてわかった、警官であるということは
舞台の上の演技とは違う、と


私の悲鳴でママはおき
驚いて私に駆け寄った
いったいどうしたのと、ママは私に訊くまえに
テレビを見た テレビで横たわっているパパを


長椅子に倒れ込み
ママは息をのんだ
泣くことすら忘れ
ただ呆然と


狂ったように私は
手当たり次第に物をなげつけた
ママは椅子から身を起こし
私を押さこみ、床に倒した


震えがとまらない。
怖くて、不安でたまらない。
パパを返して
心が張り裂けそうで、大声で叫んだ


ねぇ、パパ大事なパパ、
いま、どこにいるの
とても怖くて寂しいの
教えて、どうすれば


神様は信じられるの
パパの生きようとする意志は信じられるの
もし、パパが生きていないというのなら
その証拠をみせて頂戴


パパ、私のパパ、
聞こえる、私の泣く声が」
ああ、神様、私にはパパが必要なんです
どうかパパをしなせないで。

オリバーストーンの「ワールド・トレード・センター」を見て
20年くらい前に読んだーボブグリーンが紹介した詩を思いだした。
娘が警官である父親を心配し、その気持ちを言葉に綴り、
父親がそれをポケットにしのばせながら勤務に励むという話だった。


命を賭けて勤務する全ての警官に幸あれと思う。
映画の感想は、後日。


アメリカン・ドリーム

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