漂流国家

「戦争とは他の手段による外交の延長である」
クラウゼヴィッツ


今更言及するのもなんだが、
今月23日朝鮮総連傘下の在日本朝鮮大阪府商工会に強制捜査が行われた。
拉致事件から二十数年、拉致事件認定から3年が過ぎていることを考えれば
本当に遅すぎる対応と言わざるを得ない。
問題究明がここまで遅れたのは北朝鮮と近い政治家が
捜査への圧力ないし妨害があったからであり、
最近その政治家の影響力が薄くなったがために、
問題解決へ動き出すことが遅まきながらできたと言われている。


拉致事件は、まず日朝間の国交正常化を果たしてから
交渉で解決するというのが誰かの基本方針らしいが、
アメリカ政府からしてみれば、この姿勢が信じられないそうだ。
北朝鮮は、組織的に国外で生活している外国人を不法に拉致し監禁する国であり
また麻薬や偽ドルによって外貨を獲得して食いつないでいるのは周知の事実である。
内実は国家というより犯罪組織に近い集団というのがアメリカ政府の認識であり
不法に拉致された人間を救出するに、特殊部隊の使用という力業を選択肢から外して
普通に交渉しようとしている日本政府が、理解できないという。
至極もっともである。


余談だが、今年初めにあった金正日の訪中は
アメリカは北朝鮮の偽ドルが中国を通じてバラまかれている事実をつきとめ
米国内の中国の資産凍結を水面下で通告し、これに慌てた中国政府が
急遽金正日を中国に呼んだというのが真相だと伝えられている。
この話の真贋は定かではないが、
犯罪に対するアメリカの厳しいスタンスが伺えよう。



2001年に金正男が偽名パスポートで日本に不法に入国しようとした際
外務省の担当者は、当時経済関係で訪朝していた邦人の安全を優先し
また北朝鮮に貸しを作ることで日朝交渉を有利に進めようという意図で
金正男を拘束せずに国外へ退出させようとし、これが実行された。
もし金正男を拘束していれば拉致問題の展開はもっと違ったものになっていただろうに
想い出すだけで腸が煮えくりかえるほど口惜しい。
自分は、この指示を外相である田中真紀子が出したと思っていたのだが
金正男の国外退去を指示したのは、実は首相だという話がある。
この話も事実かどうか不明なところが少なくないが、
官邸が金正男の不法入国にかこつけて
問題を解決しようとしたアクションがなかったのは事実である。


この国の政府が、犯罪者と普通に交渉して問題を解決できると思っているのであれば
もはや何もいうことはないし、何を期待しても無駄だろう。
この問題を国民の全てが忘れるまでの時間を稼ぐためだけに
ポーズをとっているのだとすればこの国の政府は、
政府に似て異なるただの利益調整機構というべき代物であり
犯罪者国家連中の本質と何らかわることがない冷血漢の集団である。


情報、官邸に達せず (新潮文庫)

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