国家の品格

数学者である藤原氏の異色の国家論
作者は若い頃のアメリカ留学の経験から"論理=正義"という認識をもつが
その後の日本やヨーロッパで生活するうちに
大切なのは論理でなく調和であるという結論を抱くようになる。


そうした視点に立ち
"人間は生まれながらして平等"
"市場での結果が成功の目安である"
"民主主義が人類が生み出した最高の政治形態"
などと現在、日本中にはびこっている"論理"や"常識"が
日本を駄目にしている原因であり、
論理でなく日本人に必要なのは情緒であり、それを育てよと主張している。



国際人を育てるために英語を小学生の頃から教えようとしたり
受験競争緩和のために教育時間を減らした現状を例にあげ
自国の歴史や文化について無知な人間が、英語に有能であっても
却って日本人が歴史や文化に無知であるとの誤解をうみ
野蛮な民族と誤解される危険性を訴えている。


作者の述べるところは、およそ論理的でなく
数学者らしからぬもところがあるが
大勢の日本人は作者の主張に同意するだろう。
それは薄っぺらな論理に基づき権利と利益を求めるあまり、
社会に潤いをなくし、今の日本の社会がどこか歪んでいることに
誰もが気づき始めているからである。


美しいものは理屈抜きで美しいと感じる心を失い
利益至上主義に走った人間は醜いと感じる出来事が多くなったこの国で、
もう一度名誉こそが至上の価値観であるような
武士道の復権を願いつつ今年もよろしく。





国家の品格 (新潮新書)

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